職人×家具編

家具工房

製造の様子

高知県香美市。人口2万人弱の小さな町に私たちの家具工房はあります。工房に一歩足を踏み入れると、ふわ~っとヒノキの香りを体中で感じるができます。なかよしライブラリーの【子ども家具】【保育園の家具】を中心に製造し、12名社員がモノづくりに打ち込んでいます。本社機能と家具工房を兼ねた本社家屋は、3年前に移転してきた場所。元印刷工場だった場所をそのまま改装して使用しています。

選び抜かれた国産材にこだわるモノづくり

家具本体には癒しの四万十ひのき

家具本体に使用している材料は高知県四万十地方を源泉とした四万十ヒノキを使用。天然木を使用するため樹齢は70年以上の良材。決め細かい木目が特徴で、表面は頬ずりをしたくなるような手触りとヒノキの優しい香りが広がります。塗装を施さない鉋をかけただけの状態で、手触りは既にツルツル。そして程よく柔らかいことで加工性や製品になった時の使用感も優しい雰囲気になります。

この柔らかく加工がしやすいことが家具材料としては適している証拠です。永年の使用であめ色の変化していく様は愛情をかけて造り上げていく家のよう。子供の頃から使う家具にこそ、ヒノキでできた家具をお勧めしたい一番の理由です。

四万十ひのき

ヒノキの香りはフィットンチットと言われる植物が出す独特の成分からの抗菌効果があります。人にとってこの成分はプラスに働きリラックス効果をもたらしてくれます。森の中や木がたくさんある公園、自然の中に身を置くとホッと気持ちが落ち着き、時間がゆっくりと流れる経験をしたことはないでしょうか。ヒノキにはこの成分が非常に多く含まれていると言います。家具としてお部屋にあるだけで、ホッとするのは実は理論的に証明されていることなのです。

引出しの底板 国産ブランド杉を使う

引出しの底板には杉板を使用しています。杉は国産材ブランドの一つ、奈良県の吉野杉。この杉材も天然木。吉野杉でなければこのような大きな幅が取れる材料を手に入れることができません。厚みは5㎜ですが十分な強度ができます。目のキメ細かさ、強度、天然オイルを塗布した時の艶、これらは間伐材や集成材では決して拝むことのできない美しいものです。

香りもヒノキ程の特徴的ではないものの、木の香りは癒しをもたらしてくれます。毎日使う引き出しだからこそ、人に優しい無害で安心できる製品をを使用してほしい。私たちの願いです。

合板との強度の違い

一般的な家具は引き出しの底板などの目立たない部分に関しては合板(薄く切った単板を3枚張り合わせたもの)を使用しています。

なぜなかよしライブラリーでは使用しないのか?それは、一つに接着剤などの化学物質を使わないことにあります。引き出しは衣類など肌に直接触れるものを収納することがあります。免疫の弱い子どもたちに対して、接着剤に含まれる有機溶剤はアレルギーを引き起こしかねません。私たちのポリシーである無害なものを提供したい想いが高価な杉の一枚板を使う理由です。

そしてもう一つは強度です。合板は互い違いに薄板を貼り合わせたものなので割れにくいというメリットがありますが、それは使用して10年程の話。必ず劣化が進み接着効果が途切れた後は、単板がはがれていきます。杉の天然木はもともとが一枚板ですから、劣化はなく、家具になった後も徐々に水分が抜けていき、強度が増していきます。これこそ家具自体を永く使ってもらえる理由です。

家具作り工程

発送日毎にお客様の伝票が並ぶ

この日、高知県の西部【愛媛との県境】に位置する津野町より製材され、パネル状になった200枚弱の四万十ひのきが運び込まれました。ヒノキは本来節が多い木ですが、家具用に使う木はほぼ無節に近い状態。厳選し、節を省いた板だけを使っています。その表情はとても美しく、天然木ならではの香りも特徴的。そしてこのヒノキの板なんと1か月弱で全て家具に代わります。

家具作りの根幹 木取り

ひのきの無節のパネル

家具作りの心臓部はこのパネル状のヒノキをカットし家具のパーツ取り(※木取りと言う)をしていくことから始まります。経験と暗算のスピードが求められる家具作りの肝となる場所は工場長の青木が担当します。顧客からの注文の家具を手際よく木取りしていきます。1年前から受注生産(注文が入ったら作り始める)にシフトし、在庫を持たない製作方法に変えました。お客さんには仕上がったばかりの“出来たて家具”を使っていただきたいからです。この日は2週間後の発送予定のお客様の【ひのきチェスト】の木取り。

パネルソーで切断

パネル状になった板を選び、迷うことなくパネルソーで板をカットしていきます。家具の側板、中板になる部分、天板、背板、1㎜単位で寸法を計算していく様は熟練の経験と暗算のスピードが合わさってなせる仕事。さらに工場長としての仕事は、受注量に合わせた材料の仕入れ、納期の段取り、顧客へ納期連絡、営業とのすり合わせ等、多岐に渡ります。

なかよしライブラリーの家具作りの入口である木取りの仕事。ここで遅延してしまえば後に続く工程すべてに遅れが生じてしまう重要な部分でもあるため正確性とスピードは必須です。

そしてもう一つ重要な仕事。それが材料取りです。これには経験が必要になってきますが、いわゆる【目利き】です。良い材料とそうでない材料を見分けるのですが、天然木は乾燥等で製品になる前にも反りや割れが生じることがあります。製品になった後に割れが生じると作り直しはやむを得ない状態に。それを予防するために木取りの段階から木を見極め、厳選します。素人が見ると「どこが?」という程度の小さな亀裂を見落とさないのも、木取りの大事な役割です。

※木取り:製作する家具寸法に合わせて板をカットする。一つの家具の板の種類が10種類以上になることも。

先端技術と手仕事の融合

NCルータ

2018年に新たに導入された機械があります。NCルータ(Numerical Control(数値制御)」の略)。単純に説明すると、穴あけや溝堀りの作業を機械で行ってくれます。これまでは全て手作業で行ってきた作業になります。例えば、背中の板をはめ込む溝掘り、横板と縦板をはめる際に溝を掘る作業。可動棚のピッチを可変させる穴あけの作業。小さな板でかつ、大量に製作する玩具作りであれば、不要ですが、家具は大きく重量もあるため、全ての手作業は非常に重労働。そして一度穴あけを間違うとその材料が使えなくなるという、まさに職人任せ、手仕事技術に頼る状況だったのです。今は30代の職人ばかりですが、これから先モノづくりを人の技術だけに頼るのは急な変化に対応できないと考え、職人による手仕事の技術を残しつつ、単純作業を機械化する方針を決めました。

このNCルータを導入したことで、家具の組み立ての前段階の工程が賄えるようになり、製作スピードが格段にアップ。その空いた時間を、技術力の向上や品質管理にあてたり、後の工程に出てくる研磨&塗装の工程にあてることで、よりお客さんにとって品質の良い製品づくりを進められるようになりました。

モノ作りは人の手を加えるからこそ、製品に想いが込められ使われる方が、大切にしてくれると考えています。ただし単純作業や人の体力や体調に左右されがちな単純な重労働は機械化し、その時間や労力を新商品の企画や手仕事の技術の伝承などクリエイティブな仕事内容に変えていく必要があると考えています。

製品の品質が決まる組み立ての仕事

組み立て前の材料

組み立ては家具の品質を決める大切な仕事です。木取りによってパーツ訳された家具を組み立てていきます。ここで読んでいる方にお伝えしておきたいのは、組み立ての仕事は非常に難しい。なぜか?そこには天然木特有の難しさがあります。

木の特性を知る

他社工場で量産される家具のほとんどはフラッシュ構造といって、単板と心材を貼り合わせたものが多く使われています。この材は量産向きで反りや狂いがありません。

なかよしライブラリーで使用している天然木は湿気を吸いながら徐々に反り始めます。そのため木が反る前に組んでいく必要があります。この工程でもスピードと技術が求められてきます。

反りが出始めた材料

特に家具の形に組んでいくときは、片方の手で板の反りを抑えながら位置を決め固定します。無理やり入れ込もうとすると、板の反りが戻ろうとする力に反発し、割れてしまうことも。常に集中しておく必要があります。

家具の品が決まる

なかよしライブラリーの家具を見ていただくと分かるように、家具の内部、引き出しが入る中枠、背板の裏側など、通常使いでは触れるところのない部分に至るまで、きれいに研磨されており、細かな木の部品の細部に至るまで丁寧に作り込まれているのが分かります。家具が組みあがってしまうと手が入りにくい場所、いわゆる見えない部分まで作り手の丁寧さが伝わっています。

”らしさ”を出す。

引出しの無節の木目

引出しの材料となるヒノキの一枚板。樹齢70年にもなるヒノキはきめ細かい木目が特徴的で美しい艶があります。その中で所々に出てくる節。通常はそのまま使っても何ら問題のない状態ですが、これを取り除きます。ここに一手間掛ける理由は仕上がりの美しさにあります。節が入ると野暮ったい、手作り感が現れてしまいやすい。なかよしライブラリーの品質として節が表に見えることは避けています。

丁寧な研磨はなかよしライブラリーの真骨頂

次週へ続く。。。。