vol.1 赤ちゃんの"なめる"は、成長のサイン。モンテッソーリの見守る子育て。

vol.1 赤ちゃんの"なめる"は、成長のサイン。モンテッソーリの見守る子育て。

 

はじめまして。モンテッソーリ講師の吉村るみ子です。

モンテッソーリとは、「子どもには自ら育つ力がある」と考え、その力を引き出す教育のこと。
子ども一人ひとりの成長のペースや興味を大切にしながら、見守ること・環境を整えることを大事にしています。

そんなモンテッソーリの視点から、子育てのヒントになるようなコラムを、これから月2回のペースでお届けしていきます。

今回のお話しはこちら。

赤ちゃんの"なめる"は、成長のサイン。

「なんでも口に入れちゃって困るなぁ…」
赤ちゃんを育てていると、そんな場面に何度も出会いますよね。

でも実はその“なめる”という行動にも、ちゃんと意味があるんです。
赤ちゃんは、「これはなんだろう?」と、目で見て、手で触れて、口で確かめているのです。

よく観察してみると、同じ“なめる”でも、物によって関わり方がちがうことに気づくかもしれません。
それは、赤ちゃんが物の違いや役割を少しずつ理解し始めている証拠でもあります。

 

今回は、プレイルームで出会った、身の回りのものに興味津々な8か月の赤ちゃんの姿から、
ちいさなしぐさの中に“育ちのサイン”があること、そしてそれをそっと見守ることの大切さについて考えてみたいと思います。

 

ママと一緒にプレイルームへ

ある日のこと。プレイルームに、ひと組の親子がやってきました。
生後8か月ほどの赤ちゃんとママ。

部屋に入ると、ママは荷物を隅に置き、
ベビーキャリアから降ろした赤ちゃんを、部屋の真ん中に座らせました。
「ここは広いから、いっぱい動いてね」
そして、バッグから取り出した絵本を、赤ちゃんのそばに置きました。

向かったのは絵本じゃなくて…

ところが赤ちゃんは、絵本ではなく、ずり這いでママのバッグの方へ。
何を見つけたのかな?
そう思い様子を見ていると、バッグの中から麦茶のペットボトルを引っ張り出しました。

お座りの体勢で、両足の間にペットボトルを置き、立てようと試みます。
けれど重くて何度も転がってしまいます。

すると、自分の身体を前かがみにして、大きな口を開けてペットボトルをなめ始めました
よだれが床に落ちるほど、熱心になめなめ。

 

次に向かったのは絵本

「あら~」とその様子に気づいたママ。ペットボトルと床を拭いてバッグに戻しました。
そして、赤ちゃんにやさしく「こっちよ」と声をかけ、絵本の方に呼びます。

赤ちゃんは、絵本のところへ行き、さっきと同じようにお座り。
足の間に絵本を置くと、重くないのですぐに立てることができました。

手の先を使って本を開き、開いたページの片方の上にのり、もう片方を立てて、
今度は唇でなめ始めました

 

同じようで違う、その“動き”の意味

赤ちゃんは何でも舐めるもの——そう思われがちですが、よく観察すると動きには違いがあります。

この赤ちゃんは、ペットボトルには大きな口でかぶりつき、絵本にはそっと唇をあてていました
同じ“なめる”でも、関わり方がちがっていたのです。
もしかすると赤ちゃんは、ペットボトルは「飲み物を飲むもの」、絵本は「開いて読むもの」。
毎日ママの様子を見て、そんなふうに物の違いや役割をちゃんと感じ取っていたのでしょう

大人の目から見ると同じ「なめる」という動作ですが、赤ちゃんの心には違う理解があるのです。
生後数か月の間に、周りの家族の暮らしをたっぷりと吸収している赤ちゃんたち。
よく観察すると、「うちの子、天才かも!」と思える瞬間に出会えます。

動けるようになるよろこび

生後6か月を過ぎると、ずり這いやはいはいで自分の行きたいところに行けるようになってきます。
これは赤ちゃんにとって、とても嬉しく楽しいこと。
でもこの時期はまだ、四肢を使って床にくっついた状態での移動です。

そして8か月ごろになると、床にさよならをして、つかまり立ちを始めます。
すると、今まで聞こえていた音や見えていた物が、より立体的に、全体として見えてくるようになります。
わかった! そうか! へえ~!
そんな風に思っているかはわかりませんが、「うれしい」という気持ちになっているのはきっと確かです。

赤ちゃんは教えてくれる

つかまり立ちが始まる頃、赤ちゃんは今まで吸収してきたものを、私たち大人に「見せて」くれるようになります。
ママとその他の人の違い、物の違い、たくさんのことを知り始める時期です。
赤ちゃんの動きの一つひとつに意味があり、その姿はとても魅力的です。

動きを制限しないで

危険な場面を除き、赤ちゃんの動きを制限するような道具は、成長の妨げになることがあります。どうか気をつけてください。
自由に動けること、それを見守ることが、赤ちゃんの世界を広げる大切な一歩になります。

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